自転車旅行 ザ・ビギンズ

2003.07.28

※この記事は、当時の記事を元に2009年に加筆・修正したものです。
  なお、写真や地域情報は当時のものです。
  カメラはデジカメが世間に普及し始めた頃の骨董品だったので、画質は最低です。



27日夜7時に起床。日課のラグナロクオンラインを終え、友人とメッセンジャーで雑談していると28日朝8時になっていた。
大学にその日締め切りのレポートを提出しにいった帰り、なんとなく自転車で約15分の豊中駅前のブックオフへ出かける。

8:25 阪急石橋駅 出発

阪急石橋駅 

阪急石橋駅 8:25

宝塚方面と箕面方面への分岐点でもある、
阪急宝塚線の重要拠点。
駅の西口側には商店街があり、
徒歩5分圏内に推定100以上の飲食店を有する。
その数は沿線では十三に次ぐらしい。

※数年後に工事が行われ、現在は外見がかなり変わっている。


阪急蛍池駅 

阪急蛍池駅 8:32

大阪モノレールへの乗り換え拠点。
ここから伊丹空港まではモノレールで1駅ということもあり、
遠征の際には非常に便利。

駅は立派だが、周辺はちょっと…

※その後急行が止まるようになった為か
現在は若干良くなった気がする。


阪急豊中駅 

阪急豊中駅 8:40

大阪人でなくとも聞き覚えがあるであろう、豊中市の中心。
といっても物凄く栄えてるわけでもなく、
なんともハンパな感じがイイ。


日常の生活圏内ということで、特に問題なく豊中に到着。
しかし目的のブックオフは、まだ開店時間前だった…

わざわざ徹夜でここまで来て、一体何しに来たんだろうと腹が立ってきた。
ここで何を思ったか、もうちょっと走ってみようと思い立つ。

「そうだ、このまま梅田まで行ってみよう。」

梅田までは急行電車で約15分。
自転車なんて片道20分くらいしか走らせたことのない自分には、
一体どれくらいかかるのか検討もつかない。

ママチャリにサンダル姿で、はたしてどこまで行けるのか…?


豊中のコンビニで本日1本目の飲み物(バニラコーラ)と50円のチョコレート菓子を1個購入し、
とりあえず阪急の線路にそって走ってみる。

偶然カバンの中にデジカメが入っていたので、ここから撮影を開始。
※ここまでの写真は後日取りに行った。※当時。


阪急岡町駅 

阪急曽根駅

阪急服部駅

阪急岡町駅 8:47
すぐ前に微妙な商店街が。
阪急曽根駅 8:54
豊中に似た感じがしたけど、やや閑散。
阪急服部駅 9:00
かなり田舎っぽい雰囲気。老人が多そう。
阪急庄内駅 

阪急三国駅

阪急十三駅

阪急庄内駅 9:10
駅の割には、周辺はなかなかいい感じ。
住みやすそう?
阪急三国駅 9:24
駅は大きいけど周囲が無機質な感じ。
蛍池駅に近い感じ。
阪急十三駅 9:37
途中で線路を見失い、
商店街に迷い込んだと思いきや突然駅が。
思いのほか早く十三に到着。風俗店が多いことで知られる十三(じゅうそうと読む)。
大学受験の時、出身地の和歌山から出てきてここのホテルに泊まったのが懐かしい。

ここから梅田へ行くには、淀川を越えないといけない。
電車でしか渡った事がないので、果たして自転車で渡れるのか心配しながら線路を追う。

淀川

淀川越え。
こんなでかい川を自転車で越えるなんて初めてのことで、思わず風景に見とれてしまう。
ここで、えも知れぬ何かが湧き上がってくるのを感じた。

阪急中津駅 

阪急中津駅 9:51

阪急を使う学生が皆、口を揃えて存在価値を疑う中津駅。
周りにはびっくりするくらい何も無い。


じわじわと近づいてくる巨大ビル群……

10:11 梅田 到着

JR大阪駅 

阪急梅田駅

阪神梅田駅

JR大阪駅 阪急梅田駅 阪神梅田駅

ついに梅田駅(大阪駅)に到着!!
JR、阪急、阪神が向かい合う北大阪の中心地。感動……


しかし、想像以上にあっさり着いてしまい、イマイチ達成感に欠けるので
もう暫くそのへんを適当に走ってみようと思いつく。とりあえず天神橋筋商店街方面へ。

和歌山というクソ田舎で育った身には、こんな普通の立体道路も超絶都会風景に見える。
ヨドバシカメラを初めて見た時なんか、軽く失神しかけたくらい。
都会の風景に見とれながら走っていると、つい時間も忘れてしまう。

かんて〜れ 

関西テレビビル 10:24

適当に走ってたら突如出現した関西テレビビル。
えっ…なにこれ…超かっこいい…


この近くのコンビニで、2本目の飲み物を購入。スポーツドリンク。
ここで残金が60円しか無いことが発覚!!
泣く泣く銀行から1万円を引き出す。
奇妙な像と一体化しながら一休み。

天神橋筋商店街を通過。めっちゃ長い。端から端まで歩いていけるのか…?

商店街を抜けて、何も考えずにひたすらまっすぐ走ってみる。
途中にいい感じの公園があったので一休みしようと入ってみたら
とんでもない数の青いテントが建っていたので、そそくさと立ち去る。

梅田を出てから適当にはしること1時間。
現在地がさっぱりわからず、流石に不安になってきたところで地下鉄の駅を発見。

松屋町駅 

長堀鶴見緑地線 松屋町駅2番出入口 11:07

ここで、財布の中に常備していた地下鉄路線図を確認。
おっ、思ったより南下してる…?


当然ながらまともな地図は持ち合わせていないため
地下鉄を見つけて路線図でだいたいの場所を確認する以外に現在地を知る術が無いという状況。
正直、ちゃんと帰れるのか不安になりながらも
まだ昼前ということで、もう一息適当に走ってみる。

極力建物が多いほうへ進んでいけば酷いことにはならないだろう。

日本橋駅 

堺筋線・千日前線 日本橋駅7番出入口 11:15

ででで、でーたー!
関西の田舎住まいのオタク憧れの日本橋!!
まさかここを自転車で走れる日がこようとは…
完全に適当に走ってここにたどり着いたことに運命を感じる。



でんでんタウン とら

とはいえ、普通に電車で30分程で来れる場所だし、あえて今見て回るものも無いのでスルー。
デンデンタウン(大通り)の向こうには何があるんだろう?

※当時は大通り沿いに秋葉原店級の巨大な虎の穴があった。メロンブックスは辺鄙な場所にあり見つけられず。
  09年現在、オタク系ショップの殆どは大通りからひとつ内側の通称オタロードに集結している。
  この時はまだオタロードって名前も無かったんじゃないかな、多分。



通天閣 

通天閣 11:25

大阪といえば通天閣。
地元民となった今、わざわざ見に行くことは恐らく今後無いと思うので
折角だから上ってみる。
無料で登れる2階だと眺めがイマイチだったので、
500円払って頂上展望台まで行くことに。
ほとんどが機能を停止した古い古い娯楽設備や、
エレベーター内の古めかしいアナウンスにほろりとした。

ちなみに、通天閣周辺は大阪で最も治安が悪いらしい。


風景 風景 風景

頂上からの眺め。絶景なり。
ビリケン像発見。真っ先にアキハバラ電脳組を思い出した。クソオタ乙。

ここで展望台の案内板に、和歌山の文字を見つける。

和歌山…ひょっとしてこのままいけるんじゃない?

地図も無く、距離もさっぱりわからない状況で、そんな無謀なことを考えてしまった。
とりあえず和歌山に着きさえすれば、実家もあることだし……

通天閣を降りて、方向は…展望台のイラスト通りなら多分あっちのほう。
たったこれだけの情報を頼りに、和歌山行きを決意したのであった。


暫く走って、JR新今宮駅発見。
しかし、手元にJRの路線図は無いので現在地の参考にならない。スルー。

地下鉄四つ橋線花園町駅発見。手元の路線図を確認。
多分順調に南下してる。と思う。

閑話休題

まのす

ドーーーーーーン!

相変わらず適当に走っていると、だんだん町並みが怪しくなってくる。
駅もだんだん田舎っぽくなって…

津守駅 

津守駅 12:10


あ…やばい

しかし引き返すわけにもいかず、神に祈りながらそのまま進む。

芦屋橋駅 

JR芦屋橋駅 12:18


ようやくまともな感じのJR駅が出現。
ここぞとばかりに中に入り、路線図を確認。

路線図

路線図。(クリック推奨)

和歌山の文字を発見!
なるほど、ここからずっと西のほうに行けばいいんだな!
方向的に、とりあえず大阪港を目指せば目的地に近づくだろう。



ってアホか!
これは地図じゃなくて、運賃表でございます……!

高校まで殆ど県外に出たことも無いド田舎人には、地理の常識なんか通用しないのだ。


そして迷走が始まる。


千日前線 桜川駅 

中央線・千日前線 阿波座駅

千日前線 桜川駅 12:25 中央線・千日前線 阿波座駅 12:33


手元の地下鉄路線図を見るに、どんどん方向がずれていってるんだけど……
お おかしい……

大阪ドーム 

大阪ドーム 12:45

適当に走ってり最中に有名スポットに出会うと
得した気分でちょっと嬉しい。
迷ってるけど。

※現在は京セラドーム大阪。

なんか大阪ドームを見てテンションが上がってしまい、
意味も無く大阪ドームの下をグルグル回ってみる。
…当然だが、大阪ドームの下の道は円状になっていて、ますます方向がわからなくなった。

途中で見つけた、何線だかさっぱりわからない線路に沿って進む。
中央線朝潮橋駅発見。おおお、大阪港近くじゃないか。いける!

ここで流石に腹が減ってきたので、道なりの小さい店でパンと飲み物を購入。
いらっしゃいませも言わずに無言でレジを打つ店主にちょっとイラっとしたけど、
小銭を負けてくれたので一瞬で許した。

そうして大阪港駅到着……!

大阪港

さーて、和歌山はもうすぐだ。どっちへ行ったらいいのかな…



ここで気付いた!海遊館が和歌山の近くになんかあるわけない!
なんでこんなとこにきたんだ!!

急いで大阪港から脱出しなければ…!


大阪港をはさんで向こう岸に渡ることができれば若干のショートカットになるので、
橋を求めて港沿いを走る。

はし…

自転車で渡れそうな橋がない……!

河川を目の前に立ち往生する羽目に…

途方にくれていると、自転車に乗った地元の小学生三人組がゲラゲラ笑いながら通り過ぎていった。
何故か堤防のほうへ走っていくので、なんとなくあとを追ってみると……

甚兵衛渡船所  甚兵衛渡船所 13:56

この中へ吸い込まれていく小学生。
あとを追うように、主婦やオッサンも吸い込まれていく。
え、なんなの…?

渡りに船  その先には船が……!!

金を払っている様子も無いので、
流れに任せて自分もしれっと乗り込んでみる。

そして発進する船……
2分後、気付けば向こう岸についていた。

まさか渡し舟が存在するなんて夢にも思わず、幸福な偶然に軽く感動。
ちょっと世界が広がったように感じた。


船を下りたところで、ますます道がわからなくなる。
思い切って勘に任せて再スタート。

のどか

どこだここ…

工場が

だんだん重工業地帯みたいになってきた。
…こんなところ入っていってもいいのか?

工場

右も左も謎の巨大工場に挟まれた道に迷い込む。
なんか空気も淀んでて妙な気分に…
トラックしか走ってない…

文明の塔

写真では大したこと無いけど(ピンボケだし…)
この工場の異様な存在感に圧倒された。
奇怪な巨大建造物の集合は恐ろしい。
FF7の世界に迷い込んだような感じといえば判ってもらえるだろうか。

螺旋

道なりに進んでいくと、螺旋状になった道路に。
本当に自転車で走ってもいいのか散々迷ったけど登るしか無いので仕方ない。
どんどん高度が上がっていって、その先はとんでもなく高い橋。
この先行き不安感…!

工場地帯擬似パノラマ擬似パノラマ

橋の上から、擬似パノラマ写真。
見渡す限り工場という人工の景色。これはこれで渓谷とは一味違う迫力があって嫌いじゃない。

南港フェリー  南港フェリーポート 15:03

道なりに進んでいくと、フェリーポートを発見。
…発見したところで、別になんということもなく…

しまいにはダムが見えてきたりして、いよいよ不安に。
ここまで、本当に一切のヒント無しに約1時間走り続けている。
帰る道もわからないし、完全に迷子なんじゃ…

時間は16時前。ここで急に風景が変わる。

街

ま、街だ!!助かった…!
ふと標識が目に入る。

55KM

ついに和歌山の文字が!!

ここではじめて距離というものを認識する。
55kmか…まあ、ここまで来たら楽勝?

※この時は、自転車が時速何kmくらい出る乗り物かも把握していなかった…

確かな指針を得たことで、ノリノリで走行。
まっすぐ、ずんずんと進むこと25分。再び標識を確認。
まあ軽く10kmは進んだだろう。多分。

50KM

残り50km………

愕然とした。

かなりガンガン飛ばしてきたつもりが、時速にして12km……
このまま順調にいったとしても、あと4時間以上……!?

もう既に体力の限界に近い身に、この事実は過酷すぎた……

※この時は8千円以下の玩具みたいなママチャリだった。やはりママチャリは遅い。


どんよりした気分で延々と進む。
残り36km
代わり映えしない国道沿いは退屈…

残り30km。日が落ちてきた。

途中でマクドナルドに逃げ込み一休みしてる間に、外は完全に真っ暗に。

ここで衝撃の事実が発覚!
自転車のライトがぶっ壊れてて点灯しない!! 

もはや自転車屋がありそうな気配もなく、だんだん人気も無くなっていく……




真っ暗な中をそれでも真っ直ぐに進んでいくと、正面に山が現れた。
道路標識の指し示す方向は、明らかに車しか進入できないバイパス。
ライトもつけずにこんなところを走っては事故にあうこと必至なので
仕方なく山道に侵入していく。

はじめは民家がポツポツあり、なんとかなりそうな雰囲気だったのが
だんだんと建物も減っていき、街頭もなくなり、
しまいには目を開けてるのか閉じてるのかもわからない程の真っ暗闇の中で
自転車のタイヤの音だけが聞こえるという極限状態に。

じっと目をこらして地面を見ると、薄くぼんやり白いスジが見えるので
それだけを頼りに自転車を押し続けること5分。(実際は1分くらいだったかもしれない)

いつまで続くとも知れぬ深い暗闇、
そして道中で見た古びた民家の不気味な様子にとうとう心が折れ、
逃げ出すように引き返したのだった…

※今のところ、これが人生で一番、ダントツに怖かった体験である。
 本当に全く何も見えず、足元が草の感触だったことから文字通りの崖っぷちを歩いてた可能性もあり
 いつ不幸な目にあってもおかしくなかったという意味では今思い返してもゾッとする。


山越えを諦め、思い切って山を大きく迂回するルートを考えることに。
しばらく来た道を戻り、大きな交差点のところで思い切って曲がってみる。
地図が無いのでほとんど運試しという無茶苦茶っぷり。

しかしこれが功を奏し、無事山越え成功!

ここで吉野家で夕食。生まれて初めて吉野家に入った瞬間である。

みさき公園  みさき公園駅 21:57

和歌山市の小学生なら一度は行ったことがあるであろう
ションボリ遊園地、みさき公園。

ようやく知ってる地名が出てきて安堵のため息。

そして知っていることがもうひとつ。
この先には、和歌山と大阪を隔てる最強最悪の峠が待っている。
その名は孝子峠……!

死亡事故多発…

夜間死亡事故多発……
その噂は聞き及んでいたので、細心の注意をもって進む。
歩道が殆ど無いところに急カーブが連続しており、危険極まりない。
夜間で交通量が少ないのが救い…

みさき公園  孝子駅

こ 怖い…
これは出るぞ。

頂上

やっと峠の頂上に到着。和歌山入り…!!

下り

最も恐ろしい下り。写真は暗過ぎて何もわからないけど…
下りは嫌でもスピードが出るので極力インコースを走る。
一度空き缶か何かを踏んでしまい、大きく道路にはみ出してしまったけど
その時対向車が来てたら……


恐怖の峠を下りきり、ついに和歌山市街に…!

紀ノ川

和歌山で最も重要な川・紀ノ川。
ここに架かる紀ノ川大橋を越えれば、もうそこはかつてのテリトリー。

ぶらくり丁

和歌山市最大の繁華街(だったはずの)ぶらくり丁商店街。
小学生の頃は憧れの大都会だったのに、
現在はほとんどシャッター街になっている、哀愁漂う商店街。

ここまでくれば、実家まであと少し――


深夜1時頃、和歌山に帰還。




戦いの後


豆だらけになった手と、サンダルで靴擦れだらけになった足。
こうして、激しい戦いが終わった……





この無謀な挑戦が癖になり、一年後の名古屋遠征へと続くのだった。
それまでの間に、京都に琵琶湖に挑戦したレポートも存在するが、それはまたの機会に・・・



-END-