東北縦断  中編

### 11.03.13 追記 ###
東北地方太平洋沖地震 被災者の方々に心よりお悔やみ申しあげます。
この記事は08年に書かれたものですが、今となっては不謹慎な表現が含まれております。
しかし、これが当時の現地を見た私のその時の感想ですので、修正はしておりません。
ご理解頂ければ幸いです。

三日目 25日 海沿いの山道

アンメルシンヨコヨコの効果たるや凄まじく、朝起きると筋肉痛は半減していた。
ドーピングサイコー!

本日のルート

今日は、八戸から海沿いの45号線をずっと行き、岩泉は龍泉洞を目指す。
海沿いだし、きっと楽に行けることだろう。

しかし、この日の天気予報は午後からずっと雨!
しかも強風注意報ときた。
とりあえず早く出発して、午前中に久慈までいって様子を見よう。

東横インで無料の朝食(おにぎりと味噌汁だけ…)をとり、出発。

8:00 出発

ダイちゃん

種市町のマスコット・ダイちゃん。
ウニが刺さって顔が引き攣ってるようにしか見えない。

海沿いなのに、なだらかな山道がずっと続く。
しかし、八甲田山に比べたらこんなもの。

沈んじゃう

『これより先 津波浸水想定区域』

仮にも強風注意報が出てるので、これは怖い。
まったく、東北は恐ろしいところだ。

ようやくが見える。
この辺りの民家に住んでる人は、暴風警報とか出たらどんな気分なんだろう。

渓流

海が見えたと思ったら、がっつり山道。
空気も冷たく、このまま雨になったらキツイな…

久慈市 

久慈市入り 11:15 

なんとか晴れているうちに久慈市入り。
しかし市街地の気配はまるで無い…

さらに1時間進んだところで、ようやく町並みが見える。
よし、昼飯だ。

おおみ屋

丁度45号線沿いに良さそうなところがあったのでここで。
道中、ウニがどうのこうのと書かれた看板がいっぱいあったので是非食べたい。
メニューに、ウニが山のように盛られたウニ丼があったけど
マズいウニに当たったら地獄を見そうなので、普通に海鮮丼で。

本日の昼食

お食事処 おおみ屋 大漁丼 \1,650

高いよ!
でも超美味かった。
このクオリティならウニ丼にすればよかった。

思ったより疲労が蓄積していたらしく、暫く休んだら立ち上がるのも困難になっていた。
時刻は1時に迫ろうとしていたが、雨の気配はまだ無い。
空模様は相変わらずだけど…進むしかないよなあ。

四次元

いびつなやつら

野田市

野田村のマスコット。クリオネ?
これならゆるキャラ選手権にも出られそう。

クマ出没注意の看板や、強風注意報発令中の電光掲示板におびえながらグングン登る
海沿いなのに、9割方山道なんですけど…

山村

谷底の集落。ここ、津波で全部沈むんだぜ。

普代

普代村。久々の町並み。
でもこの村もがっちり浸水想定区域内。
沿岸部は恐ろしい。

普代

見えにくいけど、「浸水想定区域 ここまで」の看板。
この看板の手前の家と奥の家は、仲良くやってるんだろうか。

龍泉洞は右 

15:11
173号線トラップ


ようやく龍泉洞の文字が!
喜び勇んで標識の通り右に曲がる。
でも、思ったより早く分岐点に着いたような…?

ルートミス

後で調べてみると、どうやら広域地図には載ってない道(青い点線)に入っていたらしい。
直線距離は大幅短縮されるけど、果たして…?

因みに、この辺りで今日の走行距離100km突破。

一車線

一車線の山道をどんどん登る。
こ、この勾配は…八甲田山に匹敵するぞ…っ!

岩泉入り

16:02 岩泉まであと9km

必死に漕いでも6〜8km/hくらいしか出ない上り坂が続く。
でもこの距離なら、後は全部押して歩いても日が落ちる前にはなんとか…


草原

凄い草原。


最後の上り坂

ブレてるけど、『注意 この先急カーブ急勾配 6km』の表示。
恐らくこれを越えればゴールだけど、見ただけでわかる急勾配にげんなり。

険しさでは八甲田山に勝るとも劣らず、しかしゴールが見えているという安心感は大きい。
最後の力を振り絞って、自転車を押し歩く。

頂上

ついに頂上……!

ここからは猛烈な下り。
マツタケの山を、限界スピードで下る!
車が全く通らないので、堂々と車道に乗り上げ、ここで過去最高の51km/hを記録。
この爽快感、これがあるから上りも頑張れる。ダウンヒル最速は俺だ!

全神経を研ぎ澄ませて細心の注意で走っていたとはいえ、小石一個で吹っ飛ぶスピード。
後から思えば無茶したもんだ。脳内麻薬って怖い。

でも競輪は平地で70km/hとかの世界らしい。バケモンやで

16:44 ようやく岩泉に到着。

目当ての龍泉洞は18時まで開いているらしいので、今すぐ見に行けば間に合うけど
今にも倒れそうな状況で観光を楽しむ気にはなれず、
日も暮れ始めて先に進むことも出来ない。

龍泉洞温泉ホテル

龍泉洞温泉ホテル 2食付 \7500

龍泉洞まで徒歩10分の観光ホテル。
ちょっと贅沢だけど、他にまともなビジネスホテルや料理屋の気配が全く無く、ここ以外考えられなかった。
駅前商店街のホームページを参照のこと。
うめのや食堂で夕食とか、ちょっと無理だろ。

予約なんて当然していなかったけど、ギリギリ1部屋空きがあったらしい。
厨房への夕食のオーダーも間一髪間に合ったらしく、なんとか泊まれる事に。よかった!

17:00 宿確保

今から準備するからと20分ほどロビーで待たされる。
その間、携帯で明日の天気予報を調べた。

天気予報

あー、明日は一日中曇りかー………


って、明後日からの気温、なにこれ!
下がりすぎだろ!

果たして酸ヶ湯温泉Tシャツ一枚で、この先戦えるのだろうか…

ようやく準備が終わり、無駄に広い12畳くらいの部屋に通される。

龍泉洞温泉ホテル

食事は7時かららしいので、一風呂浴びてから仮眠。
3日目にしてこの疲れ様は、今までにないぞ…

このホテル、エレベーターが無く、通された部屋は3階。
疲労しきった足に、階段の上り下りが堪える。
手すりにつかまりながら一段ずつ登る姿は、まるでリハビリ中。

本日の夕食

本日の夕食:お宿の料理

目の前がマツタケ山だけに、ところどころにマツタケが。
夕食分で\1,500相当なので、そう考えると結構安いじゃない。

本日のお夜食

龍泉洞の水、岩泉ヨーグルト。
他にも龍泉洞ビールとかコーヒーとか牛乳とか、地元の名前を冠したものがやたら多い。
あと美味そうだったブルーベリー黒糖を齧りながら、10時就寝。


三日目:走行距離115.93km
平均速度15.2km/h  最高速度51km/h



しかし真の地獄はこれからだ。


四日目 26日 瀕死

7時過ぎ起床。

今日は龍泉洞を軽く観光してから、盛岡までの山道を突っ切る予定。

本日の行程

まずは朝食。

本日の朝食

バイキングじゃなくて、ちゃんとしたメニュー。
龍泉洞温泉ホテルサイコー!

9時チェックアウト。
早速龍泉洞へ向かう。

渓流

地底湖から流れ出る渓流。

龍泉洞 入り口

龍泉洞到着。

>龍泉洞の水は世界でも、有数の透明度を誇っていることでも有名。
>これは、地下深くに潜り込んだ沢の水が、地底湖で湧出するためである。良質の腐葉土によって濾過され、
>また、地中の石灰質を多く溶かし込んでいるので、味がしっかりとしたものとなっている。名水百選に選定されている。
(Wikipediaより引用)

要するに、水が綺麗な洞窟だ!

それでは、龍泉洞の非日常的風景をしばしお楽しみ下さい。

龍泉洞 龍泉洞 龍泉洞
長命の淵 竜宮の門 天井を見上げる
階段の頂上から見下ろす 遥か眼下の地底湖 長命の泉

なんでも、水面から50mくらい下までくっきり見えるほどの脅威の透明度だそうで、その青さたるや想像以上。
パンフレットとかだと底まで綺麗に写ってるんだけど、どうやって撮影してるんだろう…

途中、上りと下りで300段近い階段があったり、凄い体制をとらないと通れない場所があったりで
昨日のつかれきった状態で見に来なくて正解だった。
洞窟内部は12度。半袖で入って激しく後悔。

洞窟を出て、龍泉洞コーヒーを一杯。
名水百選であるところの龍泉洞の湧き水も一杯。まあ、普通の硬水だな…

あとは隣の龍泉新洞科学館を一通り見て、龍泉洞を後に。
観光客が少なかったお陰でしっかり堪能できた。

11:00 出発

とりあえず、飲み水の確保にローソンへ。
揚げお好み焼きが気になったので食べてみる。う、うん…お好み焼き。

栄え橋通り商店街 岩泉駅

駅近くの商店街と岩泉駅。

盛岡まで81KM 

盛岡まで81km


さあ、国道455号線、最も過酷な81kmの始まりである。

森スタート

岩泉の駅前を過ぎるとあっという間に山道に。
今日も全行程山道かと思うと…早くも疲労感。

落石注意

落石注意。シャレにならんで

16KM

『急カーブ急勾配 この先16km間』
この看板の破壊力は凄かった…

しかし八甲田山やマツタケ山に比べるとそれほどの急勾配でもなく、意外と苦労無く進む。

三田貝分校 

道の駅 三田貝分校 13:19


途中まともな昼食を取れそうな場所も無く、上り続けること2時間。
ようやく道の駅を発見。

入り口に下駄箱があったり、なんかいつもの道の駅と雰囲気が違うぞ。

給食室

な、なんだこの懐かしさは…

とりあえず、食堂で料理を注文。

本日の給食 本日の給食

本日の給食:本日の給食風セット(数量限定) \580

おおお…これは、なんと素敵な道の駅!

ミルメーク

ミルメークメロン。牛乳に入れたら牛乳がメロン味に!
こんな夢のようなアイテムはうちの小学校にはなかったけど、懐かしい人も居るのでは?

時間割 そうじ係

張り紙とかがいちいち凝っていて、目を楽しませてくれる。
BGMには昔懐かしい童謡が流れ続け、他に客も居なかったこともあり、暫し陶酔。
気が付けば1時間くらい休憩してしまう。

ありがとう三田貝分校。いままで立ち寄った道の駅のなかで一番良かった。
一日中あの客入り具合だと経営難に苦しみそうだけど、もっと有名になっていいと思う。

14:00 再出発

外に出ると……小雨が降っていた。
昨日みた天気予報では終日曇りだったのに…
まるで当たらないな、天気予報!

小雨の山道

気温は13度。雨具が要るかいらないか際どいところ。
たまに激しく降りだすと自転車を止めてレインコートとレインズボンを装備しないといけないし、
ちょっと晴れるとすぐ脱がないと蒸れて仕方ない。
着たり脱いだり、濡れたり蒸れたりで無駄に体力を消耗していく。

早坂トンネル

早坂トンネル。交通の難所・早坂峠をぶち抜いて去年開通したトンネルらしい。
普通はトンネルの入り口に全長が書いてあるんだけど、このトンネルは書いてないな…
しかしまあ、とりあえず入ってしまえば雨に打たれることは無い。

全長3115M

中に入って全長が判明。
出口まで3010m!
自転車で走ったトンネルの中では過去最長。
しかも中はずっと上り坂になっていたらしく、加えて安全運転の為9km/hしか出せず
実に20分間トンネルの中を走る事に…

この20分の間で、対向車は10台しか来なかった。
この先ずっと一本道なのに…人気の無い山道は怖いぞ。

トンネルを抜けても、雨は止んでおらず、上り坂は続く。

10度

気温、ついに10度をマーク。
雨で濡れてることもあり、体感温度はそれ以下。
時刻はまだ3時、ここから山頂に向かえばさらに気温は下がるだろう。

岩洞湖

岩洞湖まで到着。もうちょっとで下りのはず…っ

レインコートのお陰で体はそんなに冷えないけど、フードが付いていないので顔面がヤバイ。
鼻から下にタオルを巻きつけ、手には修理用の軍手を装着。
まるで強盗のような井出達で進む。
帽子のつばから垂れ落ちる水滴。止まらない鼻水。かじかむ手。真っ白な息。
本当に9月か……!?

死に給う事勿れ

あまりの手の冷たさに、時折立ち止まり、吐息で温めたタオルで暖をとりながら進む。
変速機を弄るにも、手がかじかんで手間取る始末。
下りに入って、ブレーキ閉め損ねたら…
上の看板を見てゾッとする。

怪しいトンネル

入り口が異様に前に出ていて、違和感を感じるトンネル。
闇に吸い込まれそう。

なんとか日が落ちる前に下り坂に突入。
しかし達成感などまるで無く、
体を動かさなくて良いうえに向かい風を思いっきり受けるので、体温がどんどん奪われる。
段々ブレーキを握っている手の感覚も無くなり、その冷たさに凍傷を心配する程。

痛みに耐えながら30分かけて坂を下り、ついに

ローソン

ローソンだ!

ホットステーション

迷わず龍泉洞ホットコーヒーを手に取り、かじかんだ手を温める。
芯まで冷えた手は真っ赤になっていた。
ビショビショになった軍手をゴミ箱にすて、新しい軍手を購入。

最後に飲んだコーヒーは、手で冷やされすっかり温くなっていた。

ここから真っ暗な道を進むこと十数分、

文明の光

街だ!文明の光だ!!

この時、リアルにうっすら涙ぐんだ自分に驚く。
こみ上げるものがあったわけでもなく、ふいに。
本当に安堵した時って、涙が出るんだな…

盛岡駅 

盛岡駅 18:34 


もう、体が冷え切ってシャレにならないのですぐさまホテルを探す。
もう5000円くらいなら何でもいいよ!

駅の目の前のホテルに飛び込む。5480円?あーそれでお願い!

ホテル ルイズ

ホテルルイズ 一泊朝食付き \5480
駅の目の前、二軒くらい隣にアニメイトがある好立地(?)。

…極寒の地から突然暖房の効いた部屋に入ったせいで、カメラのレンズが結露して
ラブホテルみたいな写真になってしまった。
慌ててレンズに息を吹きかけたら逆効果で、内部のレンズが完全に結露。
それだけ寒かったってことよ……

カメラが復活するまで待っていたかったけど、腹が減りすぎて死にそうだったので
駅前の商店街へ繰り出す。

よさそうな食事処を探すも…なんだここ、どこもかしこも居酒屋だらけ!
一つの通りに100件くらいあるんじゃないか、どうなってるんだ。
普通の定食屋が一軒もなかったので(吉野屋とかは除く)、仕方なく安い居酒屋で酒を飲まずにつまみ食い。

今日の体力の削がれ具合を考慮して、明日の為に栄養をつけねばと
にんにくの丸焼きを2玉平らげ、大嫌いなレバーを吐きそうになりながら口に詰め込んだ。

にんにく丸焼き

本日の夕食:居酒屋のにんにくとレバーと肉とサラダ(携帯で撮影)

それにしても外が寒い。これは8度くらいだな。
道行く人を見ても、全員冬服…
半袖シャツしか持たずに乗り込んだ自分の愚かさを嘆きつつ、ホテルへ戻る。

着替えのストックが尽きたので、ホテルのランドリーで洗濯。
3日間着続けた酸ヶ湯温泉Tシャツもようやく洗濯。
おまえ良くやったよ、酸ヶ湯温泉Tシャツ。

松茸酒

今朝龍泉洞で買っていた地酒で乾杯。
冷蔵庫で冷やすまでも無くキンキンに冷えてるのがまた…

岩泉松茸酒。確かに、ほのかに松茸の香りが。
…んー、リッチな感じだけどそんなに美味いもんでもないな…


そして、人生で最も寒かった9月の一日に想いを馳せながら、崩れるように眠りに付いた。
明日からは、国道4号線を走るだけ。1桁国道なら、もう安心だ…


四日目:走行距離88.8km
平均速度13.8km/h 最高速度38.0km/h


後編へ続く